お知らせ

ハイヒールの日レポート

2019.11.01
イベント

2019年8月1日、一般社団法人日本ハイヒール協会が主催する「ハイヒールの日」イベントが開催されました。

協会では設立当初より8月1日を「ハイヒールの日」と定め、毎年女性を美しく見せてくれるハイヒールを正しく履いて歩くことについて伝えるための活動を行ってきましたが、今年は協会設立5周年を記念して、人間工学の観点からハイヒールを研究されている新潟医療福祉大学 阿部薫教授をお招きし、日本ハイヒール協会のマダム由美子理事長の司会のもと協会会員のハイヒールにまつわるお悩みをもとにもっと美しく快適に履きこなすためのテクニックを教えていただきました。

スニーカーブームや仕事の場でのハイヒール着用強要に反対する取り組み「#kutoo」などハイヒールに対する逆風もありますが、当日はハイヒールをこよなく愛する日本ハイヒール協会のメンバーやマスメディアの方々が集まり、華やかな会となりました。

今回はイベントで阿部薫先生が講演された、もっと快適に、もっと美しくハイヒールを履きこなすための講義をご紹介します。

■ハイヒールの痛いを解決するインソール

参加者にあらかじめアンケートを取り、ハイヒールにまつわる悩みを先生に解説していただきました。とくに多かったのは「マメ」「擦りむき」「タコ」といった痛みにかかわる悩みです。

阿部先生:マメって一体どういうものだと思いますか?

足は手と構造が似ています。足の甲は骨っぽいし、足裏はぷくぷくしています。このぷくぷくしているものは脂肪です。これがクッションとなり体重を受けています。

ぷくぷくした足裏は原則的にマメができないようになっています。それでもマメができてしまうのは、異常な状態が続いたとき。骨っぽいところに継続的に圧力がかかると痛みを感じる。そうなると自分の身体を守る機能「生体防御反応」がおこります。圧力がかかっている部分の皮膚を厚くし守るのです。

マダム:先生、マメや擦りむきが足指の関節の部分にできてしまう人が多いようなのですが……。

阿部先生:関節の部分も骨っぽいところですね。これも皮膚の一部が繰り返し刺激を受けて角質層が厚くなるタコ(専門用語でベンチ)の一種。靴の先の部分をトゥボックスといいますが、ここにそこに足指の関節がこすれて当たることでできてしまいます。

ヒールの高さが上がると、足の甲にある指を伸ばす腱と足裏にある指を曲げる腱がアンバラスになるとひっぱられて靴の中で指が曲がってしまう。それでこすれてしまうのです。

マダム:足指は伸びているのが理想ですか?

阿部先生:そうですね、そのためにインソールを使うのが有効です。
指が曲がってしまうからといってよくつま先にだけインソールを入れている人がいますがそれだと余計にこすれてしまうことがあります。それよりもちょっと手前に入れるのがポイントです。

直径2センチ程度の中央が盛り上がったドロップ型のインソールを用意します。それを足裏の最もへこんだ部分(イラスト1参照)に当たるように設置します。靴の側でいうとハイヒールの底面の最も太い部分の中央に貼り付けます(イラスト2参照)。履いてみて微調整してください。入れる場所を間違うと痛いのでわかると思います。

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びっくりするくらい靴の中で足の位置が決まりますよ。

■浮き指にもインソールが効く

司会:浮き指だという方も多いのですが……

阿部先生:浮き指は、立っているときや歩いているときに足指が接地していない状態のことです。横アーチの崩れが原因。

足裏における足指の面積は20%。もともとハイヒールは体重がかかる面積が狭い。その上で横アーチがなくなり、浮き指になると非常にバランスが悪くなります。

鍛えられるのは筋肉だけです。骨や靭帯は体質のようなもので鍛えられません。足の指は手の指のように使わないので使わないところは退化します。タオルを指でつかんで鍛えなさいとかいいますけどなかなか難しいでしょう。そういう場合はインソール。外見はカッコいいまま内側で工夫するのです。

マダム:インソールを入れて、足指を伸ばしてきちんと歩いていれば筋肉は鍛えられますか? 

阿部先生:足指がきちんと靴底に接地してない状態でいくら歩いても筋肉にはアプローチしずらいです。しかし、足指が伸びて靴底に接地していればきちんと蹴ることができるので筋肉にも効果的にアプローチします。

マダム:それはうれしいですね! 筋肉は年齢とともに衰えていくので、きちんと使って「使える足」にしておきたいです。

阿部先生:まず立てないとダメ。足指をぴしっと伸ばしていればハイヒールで立つだけでも筋肉は使っています。

■ヒールの外側ばかりが削れてしまう

司会:続いては歩き方の悩みについて。ヒールの外側ばかりが削れてしまうという人が多いのですがその原因と解決方法を教えてください。

阿部先生:ヒールの外側が削れてしまう人は、ハイヒールを履いているときもスニーカーと同じような歩き方をしている人でしょう。

スニーカーで歩くとき、かかとの少し外側から着地し、次に足裏全体が着いて、足首が前に進んで親指の付け根と母指で地面を蹴って抜けていきます。最初に地面に接するのは、靴のかかとの外側です。この部分が削れてしまうのはとくに不自然なことではありません。

〇スニーカー(ぺったんこ靴)の歩き方
 ①ヒールコンタクト
  かかとを着く

 ②フットフラット
  足裏全体で接地

 ③ヒールオフ
  かかとが上がる

 ④トゥオフ
  つま先で蹴りだす

ハイヒールで歩くときは、かかとからは着地させずに、スニーカーでいう①ヒールコンタクトをせず、最初から②フットフラット、つま先、かかとを同時に着地し、次は④トゥオフで蹴りだす2段階で歩きます。①と③はなし、②と④だけで歩けばかかとで着地しないのでヒールは削れません。

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マダム:つま先とかかとの同時着地を何度も練習すれば習得できますか?
 足の運びだけでなく、腹筋など全身の筋肉を使いますね。重心はすぐに前に出した足に移動ですね。

(マダムが実際に歩いてみると)

阿部先生:うまいですね! 皆さんに教えてもいいですよ! (会場一同笑い)

この後は、質疑応答の時間へ。参加者からのディープなハイヒールの話題で盛り上がり第一部の講演は終了。会場を移して第二部の懇親会が行われました。
マダム由美子理事長おすすめのシャンパンがふるまわれ、ハイヒールのアイシングが施されたかわいいクッキーをお土産にイベントは終了しました。

【阿部 薫(あべかおる)】
新潟医療福祉大学 教授 博士

専門分野は、靴医学、靴人間科学、下肢装具、歩行分析。
研究領域は、靴医学と人間工学的視点からの履物と歩行の研究。

著書:
実践リハ処方(共著),医歯薬出版,1996
シューフィッター(プライマリー)養成講座テキスト第8版(共著),一般社団法人足と靴と健康協議会,2004
シューフィッター(バチェラー)養成講座テキスト(共著),一般社団法人足と靴と健康協議会,2006
臨床歩行計測入門(共著),医歯薬出版,2008
福祉技術ハンドブック―健康な暮らしを支えるために―(共著),朝倉書店,2013